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クリスチャン・リンドベルイ氏 トロンボーンリサイタル

Img_4681 先日、スウェーデン出身の多分世界で唯一のフルタイムのソロ・トロンボーンアーティスト、クリスチャン・リンドベルイ(Christian Lindberg)氏のリサイタルに行ってきました。
前回、氏のリサイタル(コンサート)に行ったのは2007年の京都コンサートホールだったでしょうか。
あの時はノルディック室内管弦楽団とともに指揮者も兼任していました。あの頃から氏も指揮者と作曲家としての活動も平行していたので、吹き振りと指揮だけで演奏しない楽曲もありました。

今回のプログラムは、第1部ではプロアルテムジケで募集していた演奏して欲しいアンケートから選んだソロ楽曲。第2部では一昨年にリリースされていた『TANGOPHORIA』のトリオでの演奏。バンドネオンというアコーディオンに似た楽器は初めて知りました。
僚友のペンティネン氏とバンドネオンのルンドベリ氏はもちろん素晴しかったのですが、リンドベルイ氏の相変らずのダイナミクスレンジと表現力にはただただ脱帽。やはりリンドベルイ氏は生粋のエンタテイナーです。

さすがに唇の衰えは来てしまったのか、それとも多忙ゆえのコンディションが調えられなかったのか、ミスがちょっと多かったのは残念。
それでもあの圧倒的パワーには脱帽です。
カミーユ・サン=サーンス:白鳥をアルト・トロンボーン36Hの特別仕様スターリングシルバーで吹くとは思わなかった。こういうのもアリなんだ。

先日、元ウィーン・フィル主席トロンボーン奏者のイアン・バウスフィールド(Ian Bousfield)氏のリサイタルにも行ったのですが、バウスフィールド氏が正確無比な静の演奏だとすると、リンドベルイ氏はまさに動。会場も違うので比較するものでもありませんが、表現力が半端ないです。

私がC.G.CONNのテナーバス・トロンボーン88Hを愛用しているのは、リンドベルイ氏の音色に憧れていたからというのもあります。
30年前はBachの42B全盛で、ヤマハもBachに影響されて1枚取りベル&ワイドスライドのカスタムシリーズをリリースしたぐらい。現在のXenoが出る前です。

当時のCONNはレミントンシャンクという専用のマウスピースしか使えない楽器でしたのでしたし学生にはあまり人気が無く、私が高校を卒業してからリニューアルされてBachと同じマウスピースが使えるようになり、オープンラップモデルや材質の違うベルもラインナップされて、リンドベルイ氏の影響もあり売れ出した感がありました。あの頃は山野楽器が輸入代理店でしたので、あまり宣伝上手ではなかったように思います。

今のリンドベルイ氏は、CONNの自身のシグネチャーモデル『クリスチャン・リンドバーグモデル』88H-CLのスターリングシルバー仕様である88H-S-CLを使用しており、初期にリリースされたCD音源とは音色が若干違います。
私は初期の頃のCDが好きなので、初期モデルであるエルクハート時代の88Hを吹いているリンドベルイ氏の音に憧れます。

実はバウスフィールド氏もエルクハート時代のCONNを使用していて、現在使用しているのはGetzen社の4147IBモデルは氏のシグネチャーモデルですが、エルクハート時代の音色を持たせた現代風のトロンボーンになっているそうです。
ちなみに、フランスのジャック・モージェ氏監修のクルトワAC-440BRもクルトワらしからぬCONNぽい音がしますね。

似て非なる音色を持つ二人が続けてリサイタルを行ってくれたのでいい勉強になりました。

それにしても有名どころの奏者が皆近い世代で活躍されているのも興味深いです。皆個性の有る音を奏でているように思います。あくまでも個人的感想ですけど。

ラニミール・スローカー氏が一回り近く年上ですが、その下にフランスのベッケ氏、リンドベルイ氏、ニューヨーク・フィル首席のアレッシ氏。
ヨーロッパ系の演奏者はなかなか日本では聴く機会が無かったのですが、ベルリン・フィル首席のクリストハルト・ゲスリング氏も同世代ですね。私はドイツ管のトロンボーンではゲスリングモデルのマウスピースを使っています。
その下の世代に同じベルリン・フィル首席のオットー氏にバウスフィールド氏と層が厚いです。
バス・トロンボーン奏者だとロッテルダム・フィルのベン・ファン・ダイク氏や、ボストン響を退官されたダグラス・ヨー氏が有名ですね。

生年    オケデビュー    氏名   
1946    1965    Branimir Slokar
1954    1972    Michel Buecque
1955    1978    Ben van Dijk    (Bass Trombone)
1955    1985    Douglas Yeo    (Bass Trombone)
1957    1984    Christhard Gössling
1958    1976    Christian Lindberg
1959    1975    Joseph Alessi
1963    1985    Olaf Otto
1964    1979    Ian Bousfield

それにしても上の世代が固まり過ぎていて若手がなかなか出てきませんね。いや、出てきていますけど特色が無いというか何というか。。。
今のところテナーでは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管のヨルゲン・ファン・ライエン氏、バス・トロンボーンではベルリン・フィルのチースリク氏から引き継いだシュテファン・シュルツ氏、アレッシ氏の弟子でボストン響に移ったジェームス・マーキー氏ぐらいでしょうか。

1971    1993    Stefan Schulz    (Bass Trombone)
1975    2001    Jörgen van Rijen
1975    1997    James Markey    2007年からBass Tromboneに転向

新生スローカー・トロンボーン四重奏団に迎えられたスローカー氏の弟子である南西ドイツ放送交響楽団首席の清水真弓さんや、南デンマークフィルの玉木優さん、アレッシ氏の弟子であるシアトル交響楽団首席の山本浩一郎さんなど日本人も負けていませんが、もうちょっと個性的な色艶が欲しい気がします。
ミルウォーキー交響楽団首席の神田めぐみさんは楽器クリニシャンで同僚のグリンホー氏が引退してしまったので、指導者という側面が大変なのでしょうかね。子育ても大変そうですし。でもまたCD出してもらいたいです。

3月には新生スローカー・トロンボーン四重奏団のリサイタルがあるので楽しみです。

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