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GUNDAM SEED DESTINY

基本的にアニメや映画などの考察・感想をこういった不特定多数の人々に知らしめる Web や Blog などで公開するのは、個人的に押しつけがましい行為だと思っているのです。物事の見方・感じ方は人それぞれだし、何より思い入れでどうとでも変わるものです。特に批判するという行為自体は誰にでもできることだし、こういった情報媒体では一方通行になりやすく、ある種無責任なざれ言だと捉えられても仕方のないものです。 ここで、意にそぐわない形で発言するのは、何よりこの国の文化の変遷があまりにも商業的になりすぎているのではないかということ。小さい頃からテレビっ子だった私にとっては『たかがアニメ、されどアニメ』なのです。アカデミー賞まで受賞した日本の文化になったアニメの中で、このような状態が公然と行われていることに憤懣やる方ない気持ちでいっぱいなのです。 たしかにアニメや映画は文化とはいえ、商業的に成り立たなければ創る事自体が難しいものです。しかし、商業的な要求のみがまかり通れば、物語自体が破綻するのもまた当然の報いでもあります。GUNDAM SEEDシリーズはまさにこれで、親会社『バンダイ』の商業ベースを成り立たすために創らされている、サンライズの悲鳴が聞こえてくるかのような作品です。 もともとサンライズはロボット・SF物の作品のエポックメイキング的なアニメ制作会社で、視聴年齢層の興味をうまく作品の中に取り込み、物語を発展させていくという、現在の『原作ありき』のアニメ製作とは一線を画しているオリジナル重視の会社です。 初代『機動戦士ガンダム』で熱狂的なファンを獲得してからは、そのネームバリューの重さに試行錯誤を繰り返し、さまざまな『ガンダム』を創り上げてきましたが、その特定の作品のシンパ同士での論争は後を絶たず、OVA作品では途中で監督が交代してしまうということもありました。ここまでファンの目が厳しい作品は珍しいと思います。 今世紀初の『ガンダム』ということでスタートしたこの『SEED』シリーズは、初代のストーリーを踏襲しつつ、従来の視聴者年齢層を下げて物語も分かりやすく、またキャラクターデザインも現代風の子供っぽくてあまり差異の無い作品になっています。しかし、いくら視聴者年齢層を下げた作品といっても、あまりにも馬鹿にしすぎてはいないかと言わざるを得ません。とにかく映像の使い回し(フィルムバンク:バンクと呼ばれる)が激しく、脚本も行き当たりばったりで初期設定を平気で変更すると言う荒技が多用されているのです。 バンクは、昔から合体シーンや変身のシーンなどで結構使われていました。これはセル画を一から起こしていたら人的にも費用的にも時間的にも馬鹿にならないので、一話完結の作品では当たり前のことでした。現在はセル画はあまり使用せず、セルシスのアニメ制作支援ソフト『RETAS! Pro』などのパソコンソフトや、CGなどを使ってアニメを製作するのが一般的になりました。これは『IT』が発展した現在、人件費の比較的安い中国・韓国などの海外制作会社に発注し、インターネットでのデータのやり取りのみで、リアルタイムにアニメ製作ができるという利点があります。 ただ、データが簡単に修正できると言うのは手抜きも容易ということで、パーツの組み合わせのみでいくらでも違う戦闘シーンなどが作れてしまうのです。それが分からないようにしていればまだよいのですが、SEEDシリーズではあからさまに分かってしまうし、Destiny は特に回想シーンが物語の半数を占め、第22話のテロップミスや、インパルスが前作の主役機で今作には登場していないストライクになっているという事件は、あまりにも酷いと言わざるを得ません。 この作品の世界観は現代の対立構造を浮き彫りにしているだけでなく、もっと深い所の差別意識まで表していますが、あまりにも登場人物の心理描写や行動が稚拙すぎ、バックグラウンドの説明が足りないことで、アークエンジェルファントムペインの『何故こういう行動を取るのか』が全く見えてこないのです。まるで素人が脚本を書いているのではないかと錯覚するほどです。結構複雑で分かりづらい対立構造であった『Zガンダム』では、キャラクターの行動理念と性格付けが作品中で的確に表現されており、作品を通してどうしてこういう行動を取るのかを視聴者に納得させるものがありました。何故、あの『サイバーフォーミュラ』を手がけた福田監督はこういう作品にしてしまったのかが不思議でなりません。 5月終わりには『機動戦士Zガンダム〜星を継ぐもの〜 A New Translation』が公開されます。TVシリーズの再編集版と思いきや、『A New Translation』が示す通り富野監督の20年近くたった今、もう一度再構築した新解釈の作品として世に出ます。Zの評判によっては、SEEDシリーズの今後が決定されるかもしれません。